研究概要 |
FcgRIIB,PD-1ダブルノックアウト(DKO)マウスのうち、血清中に抗尿路上皮抗体(AUAb)の発現を7匹(53.8%)で認めた。WTマウスでは0匹(0%)であった。VSOP法による1回排尿量の検討では、4週齢でほぼ同等であったものが、16週齢のDKOマウス(AUAb+群)で有意な低下を認めた(DKO:AUAb+vs.コントロール;96.3±18.4μl vs. 223.9±19.7μl, p<0.01)。採取したDKOマウス(AUAb+)の膀胱ではDKO(AUAb-)マウスやWTマウスに比べ、上皮におけるウロプラキン3Aの染色性の低下と、umbrella cellsの縮小を認めたが、Claudin-4の染色性は変化を認めなかった。一方サイトカインアレイでは、DKOマウス(AUAb+)膀胱においてTNFα(AUAb+/WT=6.2,p<0.01)などの炎症性サイトカインの有意な上昇が見られ、免疫染色では粘膜下にTNFαを発現する炎症細胞を確認した。TNFαの発現量は膀胱と胃のみで上昇していた。一方AUAb含有血清i.p.実験では、13週齢の時点でi.p.群において1回排尿量の有意な低下を認め、全身の免疫状態が正常な個体でも、自己免疫性膀胱炎が発症することが確認された。現時点での結論として、AUAb発現DKOマウスは自己免疫性膀胱炎の自然発症モデルとして妥当といえ、AUAbは膀胱特異的な炎症反応と機能的膀胱容量の低下をTNFαなどの炎症性サイトカインを介して誘導していることが示唆された。一部の間質性膀胱炎(IC)患者においては、その発症に自己免疫メカニズムが関与していることが以前から報告されており、本研究の知見を生かして臨床検体の解析を行うことで、ICの診断、治療につなげて行く方針である。
|