研究概要 |
尿路バイオフィルム感染症は、細菌がバイオフィルムを形成して抗菌薬や生体の感染防御系から免れることにより、MRSAや多剤耐性緑膿菌による広範な院内感染症の元凶となることが判明して久しい。未だその予防法・治療法は確立されておらず、ブレイクスルーが求められている。本萌芽研究では、新規に標的医療の概念を組み入れた抗バイオフィルム療法を探索するために、リアルタイムイメージング(タイムラプス)が可能な革新的in vitroバイオフィルム実験モデル用マイクロリアクターを考案する。本リアクターを用いて、カチオニックリポソームを基盤とするドラッグデリバリーシステム(DDS)による標的医療の可能性を検証する。 1,新規in vitroバイオフィルム実験モデル用マイクロリアクターを開発した。 平成20年度に、14の培養室と薬液室を有し、1〜2菌種を7種の薬液で評価できる新規マイクロリアクター(デバイス)を設計し、特許を出願した。本デバイスは、顕微鏡の観察台に搭載可能なサイズで、正立顕微鏡、倒立顕微鏡の両方で観察することが出来る。試作したデバイスを用いて、蛍光顕微鏡および共焦点レーザー走査型顕微鏡にて観察した結果、緑膿菌が14培養室にバイオフィルムを形成し、基本設計に問題がないことを確認した。しかし、使用上の課題や問題点があり、平成21年度に改良を行う。 2,平成20年度は、岡山大学泌尿器病態学感染症研究班の過去数年間の研究成果として確立したキャピラリーフローセルシステムにおいて、DDSの評価を開始した。 使用菌株は当研究室においてバイオフィルム形成に関するデータが蓄積されている緑膿菌株(Pseudomonas aeruginosa OP14-210)を使用、DDS用サンプルとして阻害候補化合物/カチオニックリポソーム(トランスフェクション試薬:LIC_<TM>)の複合体を調製、標的医療への応用性を検討している。
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