研究概要 |
1.卵巣組織凍結法の検討 凍結保護剤の浸漬に適する成型法として、専用スライサーによる薄切法(1mm厚)のと短冊切り法(3mm厚)とについて卵子・卵巣を行い形態学的に比較した結果、薄切法がより良好であることが明らかとなった。また、種々の凍結保護効果を検討した結果、エチレングリコールとジメチルスルフォキシドの等量混合液15%(v/v)が最も良好であることが明らかとなった。また、熱伝導速度が大きくなるようにガラス化保存容器を開発し、満足できる急速冷却の速度(20〜-80℃間において17,000℃/皿in)を得ることが可能であることを確認した。 2.凍結保存卵巣組織内卵母細胞の生存率の検討 同意の得られた患者から摘出されたヒト卵巣組織を用いて凍結融解を行い、卵子を回収して形態学的に判定した結果、開発したガラス化急速凍結法で88.5%(855個/954個)と緩慢凍結法の41。7%(342個/821個)より有意に高率で、非凍結の91.9%(329個/358個)にほぼ相当する生存卵子が回収できることを確認した。 3.凍結卵子評価のためのゲノムDNA増幅・解析と核型分析法の検討 卵子の全ゲノムをphi29 DNA polymeraseを用いるrolling cycling amplificationにより増幅し、LightCyclerを用いるreal time PCR法による増幅高率の評価と、DNA多型解析による増幅精度の評価とを行った。その結果、卵子1個のゲノムをRCA法により2時間で50倍に増加させることが出来た。アリル欠失もほとんど見られず増幅精度も高いと考えられた。また、染色体特異的DNAプローブを用いたFISH法について検討し、凍結保存卵子の染色体核型分析が可能であることを確認した。
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