研究課題
1.卵子および卵巣組織凍結卵子の生存率と形態学的評価から凍結卵巣組織の成型に最も適するスライサーとその使用方法の改良を重ねた結果、おおむね90%の生存率・正常形態維持率を確保できるスライサーを得ることができた。この条件下で、ガラス化急速凍結法に用いる凍結保護剤の混合比の検討を実施したが、前年度までの検討で得られた凍結保護剤を越える成績は得られず、ヒト卵巣組織の凍結には専用スライサーによる1mm厚薄層切片をエチレングリコールとジメチルスルフォキシドの等量混合液15%(v/v)に浸漬し、ガラス化急速凍結を行う方法が最適であると結論された。残念ながら、当初考案した短冊切り法では十分な成績が得られなかった。2.凍結保存卵子の生存率および発生能の評価法凍結保存卵子の発生能を評価するためには、ヒト精子との受精が必要であるが、今年度卵巣組織の提供を得ることができた患者が未婚者で受精研究について同意を得ることが困難であった。そこで、3前核のため廃棄となった体外受精卵子を用いて、卵子のゲノムDNAの評価と核形分析法の検討を実施した。これは、3前核(3PN)胚の少なくとも一部は形態学的正常な初期胚に発生すること、均一な胚で研究に必要な数の供給を受けることが可能なことなどによる。この結果、conventional IVFによる3前核胚とICSIによる3PN胚とでは、発生機転とその後の細胞分裂にともなう染色体構成の変化に明かが違いが生じていることが示され、FISHと新たに開発したDNA多型分析(rolling cycling amplification法によるDNA増幅とlight cycler法を組み合わせて実施)によって、凍結解凍ヒト受精卵の核型とDNA由来を分析できることが確認された。
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