研究概要 |
ヒトアデノウイルス(HAdV)は現在51の血清型が存在し、眼疾患、呼吸器疾患、消化器疾患など様々な感染症を引き起こす。我々は以前にPCR-RFLP法を用いた血清型同定法を開発したが、標準株と異なる切断パターンが存在した。そこで、HAdVのヘキソンおよびブイバーの塩基配列を解析し、系統解析を用いた血注型同定法を開発した。これによりこれまで同定不能であった分離株の血清型同定が可能となり、また、新しい血清型の存在も明らかとなった。特に我々が世界で始めて検出した血清型はHAdV53と命名できる全く新しい血清型のHAdVであり、これによる院内感染例が同定された。 臨床症状の原因となるHAdV遺伝子はいまだ特定されていないが、ヘキソン領域のsequence解析によって中和のepitope領域はかなり絞られてきた。これにより今後治療楽やワクチンの開発に期待が寄せられる。 HAdVはその感染力の強さから国内のみならず世界へと拡がる。特に開発途上国ではHAdVに対する正しい知識と病因検索に対するシステムは確立さていないHAdV感染症が多発する東南アジア地域を含めた発展途上国の疫学調査は、日本が主体となって行っている。また、主にアジア近隣諸国の疫学調査により、今後の流行の予測に役立てることも可能となっている。したがって、HAdV53型の血清疫学的調査は重要な次の研究課題である。我々は現在、新しい抗HAdVを用いて、in vitro, in vivo試験を実施中である。本薬の臨床効果が実証できれば、その臨床的意義は非常に大きいと考えられる。
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