研究概要 |
ドライアイの疾患メカニズムの解明、涙液分泌を促進する新規薬剤の開発、さらにそれを用いたドライアイ疾患の新規治療法の確立を目指し、涙液分泌とイノシトール1,4,5三リン酸受容体(IP_3)受容体の関係、涙腺炎症発症の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。初年度は涙液分泌に的を絞ったIP_3RKOマウスの表現型解析を行い、ドライアイモデルとしての妥当性を検証した。IP_3R2/3KOマウスおよび野生型マウスを用いて、ピロカルピン刺激時の涙液分泌量を測定した。また、涙腺組織を組織学的および免疫組織化学的な解析手法を用い、IP_3RKOによる涙腺組織構造を観察した。その結果、ピロカルピン刺激時の涙液分泌量をIP_3R2/3KOマウスと野生型マウスで比較した結果、涙液分泌量は、野生型マウスに対してIP_3R2/3KOマウスは有意に低下することが分かった。また、同時にCa^<2+>応答性も低下していた。次に、IP_3R2/3KOマウスの涙腺を組織学的に解析したところ腺房細胞に分泌顆粒の異常蓄積を認め、腺房細胞も萎縮していた。さらに、10週齢以降のIP_3R2/3KOマウス涙腺に多くのリンパ球浸潤が認められた。以上の結果よりIP_3RKOマウス涙腺における各種IP_3Rの発現レベルと各種IP_3RKOマウスの涙液分泌の関係が示され、IP_3Rを介したCa^<2+>シグナルが涙液分泌に重要な役割を果たすことが明らかとなった。さらに、IP_3R2/3KOマウスがシェーグレン症候群患者に認められる涙腺の炎症と酷似した表現型を呈することから、IP_3RKOマウスの外分泌腺異常を詳細に解析することがシェーグレン症候群の発症機構解明に繋がると考えられた。
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