研究概要 |
ドライアイの疾患メカニズムの解明、涙液分泌を促進する新規薬剤の開発、さらにそれを用いたドライアイ疾患の新規治療法の確立を目指し、涙液分泌とイノシトール1,4,5三リン酸(IP_3)受容体の関係、涙腺炎症発症の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。初年度は涙液分泌に的を絞ったIP_3RKOマウスの表現型解析を行った。その結果、涙腺における各種IP_3Rの発現レベルと各IP_3RKOマウスの涙液分泌異常を確認し、IP_3Rが涙液分泌に重要な役割を果たすことを明らかにした。 さらに本モデルは涙腺への炎症性細胞の浸潤が認められ、シェーグレン症候群様の表現型を示すことから最終年度は涙腺炎症の分子レベルでの解析を中心に検討した。涙腺における炎症性変化を分子レベルで明らかにするため、IP_3RKOマウスの涙腺細胞におけるTNF-αやIL-6等の炎症性サイトカインのmRNAをRT-PCRにて発現解析を行った。その結果、IP_3R2/3KOマウス涙腺でTNF-αおよびIL-6の発現亢進が認められ、IP_3R2/3KOマウス涙腺は炎症状態にあることが明らかとなった。さらにシェーグレン症候群の診断基準の1つであるSSAに対する自己抗体の発現を確認した結果、IP_3R2/3KOマウス血清中のSSAに対する自己抗体発現が亢進していた。以上の結果よりIP_3RKOマウス涙腺における各種IP_3Rの発現レベルと各種IP_3RKOマウスの涙液分泌の関係が示され、IP_3Rを介したCa^<2+>シグナルが涙液分泌に重要な役割を果たすことが明らかとなった。さらに、IP_3R2/3KOマウスがシェーグレン症候群患者に認められる涙腺の炎症と酷似した表現型を呈することから、IP_3RKOマウスの外分泌腺異常を詳細に解析することがシェーグレン症候群の発症機構解明に繋がるとえられる。
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