研究概要 |
眼内悪性腫瘍に対して免疫療法を開発していくためには、眼腫瘍に対する免疫応答を効率よく誘導することが重要と考えられる。多くの腫瘍細胞は自己に由来するため、免疫寛容状態にある。前年度、我々は効率のよい癌免疫療法の確立を目指し、ヒト樹状細胞に着目して、まずはぶどう膜悪性黒色腫細胞とヒト単球由来樹状細胞の共培養がもたらす影響について検討した。その結果、ぶどう膜悪性黒色腫細胞により、ヒト樹状細胞のMHCクラスI分子と補助シグナル分子の発現が低下し、ヒト樹状細胞のアポトーシスが誘導されてT細胞の増殖能が低下することを発見した(Exp Eye Res 91(4) : 491-499, 2010)。また前年度に、ぶどう膜悪性黒色腫患者の眼内液からヒト樹状細胞の機能を低下させる液性因子の網羅的検索をフローサイトメトリーにより行い、ぶどう膜悪性黒色腫の眼内液中には、ぶどう膜悪性黒色腫の増殖に関わるangiogeninとbasic FGF、ヒト樹状細胞の機能を低下させる液性因子であるVEGF、TGF-β、IL-10、ヒト樹状細胞の浸潤を促進するMCP-1、MIP-1β、RANTES、IP-10、Migが高濃度に存在することが明らかとなった。これらは惡性黒色腫以外の良性色素性眼内腫瘍と比較してぶどう膜悪性黒色腫では有意に高濃度であることから、治療標的因子としての可能性やぶどう膜悪性黒色腫の腫瘍マーカーとしての有用性が示唆された(投稿準備中)。今後はこれらの液性因子を制御することによって、眼腫瘍の免疫応答を誘導する方法を確立し、治療法への応用を模索していく予定である。
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