1.小児がんにおけるがん幹細胞の研究については、小児固形腫瘍の細胞株16株を用いて、SP細胞の有無について検討した。細胞株の内訳は神経芽腫7株、横紋筋肉腫4株、ユーイング肉腫5株を用いた。その結果、ユーイング肉腫の1株を除く他の15株で少量ながらSP細胞(0.12-14.6%)が存在することが確認された。Verapamilを添加して、SP分画が消失するかについて検討行ったところ、Verapamilに対する感受性は様々であったが、小児固形腫瘍細胞株の多くでSPのような腫瘍幹細胞が存在する可能性が示唆された。そこでSPとnon-SPのそれぞれの分画を採取し、ヌードマウスの皮下に移植し、発がん性の相違を観察したが、検索した神経芽腫細胞株でSPとnon-SPのいずれも皮下に腫瘍の形成が見られなかった。免疫不全マウスとしてSCIDマウスなどのより腫瘍がつきやすいマウスを用いる必要がおるのかもしれない。 2.幹細胞生物学から見た小児外科疾患の治療の可能性について、鎖肛における括約筋の低形成による排便機能障害を改善させる目的で、括約筋の再生による治療の可能性について検討した。ラット筋芽細胞を採取し、培養増幅してラットの下肢の筋欠損部に移植して筋肉の再生が起こるかどうかについて検討した。移植したGFPで標識した筋芽細胞はホストの筋の再生に関与することが確認された。ただし、生着した移植細胞の数はきわめて少なく、今後この効率を高めていくことが課題であると考えられた。さらに、肛門挙筋に移植して括約筋群の再生の可能性について検討したところ、移植細胞は肛門挙筋の周囲で筋管細胞に分化することまでは確認できたものの、筋線維の形成は確認できず、何らかの工夫が必要と考えられた。成長因子の利用などが検討課題と考えられた。
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