本研究は、地域の救急医療対応能力を充実させ、広く国民に救急医療へのアクセスを確保することを目的とした挑戦的萌芽研究である。 本研究では、研究代表者らが開発した学習プログラム(=救急初期診療コース)を初期研修医を対象にして催行し、以下の3項目を研究するものとする。(1)受講前後で救急初期対応能力の向上が認められるかを検討する。(2)受講後一定期間を置いた後に救急初期対応能力に関する知識・技能が保持されているかを検討する。(3)救急疾患への日常的な曝露か救急初期対応能力に関する知識・技能の保持に影響しているかを検討する。 本研究は、準備期、コース実施期、受講後再調査期、受信動向調査期、解析期の5段階に別れ、平成21年度はコース実施期にあたる。妥当性を確認した救急初期診療コースを開催し、コース受講前後での救急初期診療能力の獲得についてOSCE(客観的臨床能力試験)で測定した。コース前後でOSCEおよび筆記試験を行い、コース受講による知識・能力獲得を測定した。OSCE実施時にはビデオ撮影を行い、再現可能な形で臨床パフォーマンスを測定し、一定の効果が確認された。コース受講から一定期間をおいてコース受講群およびコース非受講群を比較する測定は、研究計画の遅れにより平成22年度に繰り越された。平成22年度に当該測定を実施し、コース受講から一定期間の臨床経験の測定と、一定期間後の臨床パフォーマンスを行った。その結果、コース受講者ではコースで獲得された臨床パフォーマンスが一定程度維持されることが確認された。その解析については平成22年度に引き続き行う予定である。
|