研究概要 |
本研究の研究動物には,雄性BALB-Cマウス(8-12週,体重20-30g)に10mg/kgのlipopolysaccharide (LPS: E. coli 055:B5; List Biological Laboratories, Campbell, CA)を腹腔内投与したものが,敗血症モデル動物として用いられた。敗血症病態で誘導された上皮分化機能細胞は,骨髄に由来する上皮性分化を特徴とする抗サイトケラチン抗体陽性細胞(Bone Marrow Derived Epithelial Cells: BMDECs)として特徴付けられた。そのBMDECsは,抗サイトケラチン抗体や,CD45, CD11b, CO146で染色可能な細胞であり,こららの抗体を用いた抗体ビーズ法で敗血症病態24時間以降の心臓血より回収することができた。しかし,骨髄抑制病態を特徴とするop/opマウスを敗血症にした際には,cytokeratin陽性BDMDECsの回収率が10%以下の量に減少することが確認された。BALB-Cマウスの敗血症24時間と48時間で回収されたcytokeratin19(上皮マーカー)陽性のBMDECsにおいて,SP-C(2型肺胞上皮細胞マーカー),podoplanin(1型肺胞上皮細胞マーカー),caveolin-1 (血管内皮細胞)のイムノブロット解析とreal time RT-PCR解析を行った結果,BMDECsにはアンチトロンビンIII(活性値100%以上)とG-CSFの外来投与に依存して,SP-Cとcaveolin-1の発現が高まるが,podoplaninの発現を高めないことが確認された。このように,20年度の研究では,敗血症病態で肺に誘導される上皮分化機能細胞は骨髄由来である可能性が強く示唆されたとともに,このBMDECsはアンチトロンビンIIIとG-CSFに依存して,2型肺胞上皮細胞と血管内皮細胞に分化する可能性が確認された。
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