研究概要 |
本研究は、われわれがこれまで携わってきたストレス応答キナーゼに関する研究手法ならびに研究成果をもとに、線虫C.elegansを用いた遺伝子探索によってストレス応答を制御する新たなリン酸化シグナル経路を見出し、口腔疾患の新たな予防、診断、治療法のターゲットとしての意義を探ろうとするものである。昨年度、われわれは哺乳類ASK1分子の線虫オルソログであるNSY-1の遺伝子変異個体が、無酸素状態において野生型個体に比べて生存率が上昇するという興味深い表現型を見いだし、NSY-1-PMK経路が無酸素に対する個体の応答に重要な役割を果たしていることを示した。本年度は、NSY-1下流で発現制御を受ける因子を探索するため,マイクロアレイを用いた遺伝子発現量の網羅的解析を行った。野生型において無酸素により発現量が2倍以上に増加し、かつ無酸素条件における発現量がnsy-1変異体において野生型の2分の1以下となる遺伝子を抽出した結果、13の遺伝子が得られた。定量的PCRにより結果を再確認し、さらにその中でPMK-1経路に依存した発現パターンを示した遺伝子を7つ候補遺伝子として得た。これらの遺伝子のプロモーター領域をそれぞれ単離し、その下流にGFPをつないだ外来性遺伝子を発現するトランスジェニック線虫を作製した。その結果、互いに異なる遺伝子プロモーターに由来する2系統が、NSY-1-PMK-1経路の活性に依存してGFPが発現することを確認し、蛍光顕微鏡を用いたバイオイメージングによってNSY-1-PMK-1経路の活性化をモニターできる系の確立に成功した。現在さらに、これらのトランスジェニック系統を用いたストレス応答制御因子の遺伝子スクリーニング系の構築を進めている。
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