骨への臓器特異的転移、および骨転移の成立・進展のメカニズム解明のために、本研究では骨転移における骨髄癌細胞ニッチの役割を明らかにすることを目的とし、本年度は「細胞接着分子N-カドヘリンを介した骨芽細胞と癌細胞の接着がニッチの形成に重要な役割を果たしている」との作業仮説を立て、以下の検討を行った。 1.N-カドヘリンを過剰発現する癌細胞株の樹立 骨転移におけるN-カドヘリンの関与を明らかにするために、癌細胞にN-カドヘリン遺伝子をトランスフェクションし、N-カドヘリンを恒常的に発現する細胞株を樹立した。 2.shRNAを用いたN-カドヘリンのノックダウン癌細胞株の樹立 上記のgain of function実験に加え、loss of function実験を行うために、恒常的にN-カドヘリンを発現する癌細胞にN-カドヘリンshRNAを強制発現するコンストラクトを設計、導入し、N-カドヘリンのノックダウン細胞株を樹立した。 3.N-カドヘリン過剰発現株およびノックダウン株の性状解析 (1)細胞形態に対する作用:N-カドヘリンを過剰発現した細胞株では親株と比較して敷石状に形態変化を示したのに対し、N-カドヘリンをノックダウンした細胞株では逆の変化が認められた。 (2)細胞増殖に対する作用:N-カドヘリン過剰発現株およびノックダウン株のいずれにおいても、親株と比較して細胞増殖に変化は認められなかった。 4.骨組織におけるN-カドヘリンの局在 骨組織におけるN-カドヘリンの局在を免疫組織化学的に検討した。その結果、骨芽細胞がN-カドヘリンを発現することが確認された。
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