研究課題
昨年度に引き続き、現在臨床応用されている骨髄由来未分化間葉系幹細胞(BMMSCs)より低侵襲な抜去歯(不要永久歯および乳歯)からの歯髄幹細胞の単離・培養方法の確立、幹細胞供給源としての応用の可能性について検討した。特に、本年度は研究計画に従い、歯槽骨再生、またその同種移植の可能性について、イヌ顎骨再生モデルを用いて研究を行った。対照群として、欠損のみとし、抜歯かのような歯を抜いたままの状況を想定した群に加え、現在臨床応用を行っているBMMSCsによる骨再生群とも比較検討した。さらに、同種移植の可能性については、親子のイヌを用いた。実験では子犬乳歯より歯髄幹細胞(DTSCs)を採取すると同時に、顎骨モデル作製のために抜歯した親犬歯髄(DPSCs)と骨髄幹細胞(BMMSCs)を採取し、培養を行った。抜歯後の1ヶ月の治癒期間後、親イヌ顎骨に自然治癒しないとされる直径10mmの歯槽骨欠損を作製し、親イヌ骨髄由来BMMSCs、DPSCs、子犬DTSCsによる骨再生能について組織学的および組織形態学的に検討を加えた。その結果、移植後4週においても、コントロール群(欠損のみ)では骨形成が得られなかったのに対し、BMMSCs、DPSCs、DTSCs移植群においては骨形成が確認された。また、8週後においても有意に骨形成能に違いが認められたが、細胞間での有意差は認められなかった。このことにより、歯髄幹細胞による骨再生の可能性が示され、さらに子の乳歯歯髄幹細胞を用いて、親の歯槽骨再生が行える可能性、つまり同種移植の可能性も示唆された。このことにより、近い将来、骨系統疾患に対する歯髄幹細胞を用いた骨再生療法の実現性を示すことができた。なお、この成果はTissue engineering(2010 in press)において発表した。来年度はこれらの応用性についても検討を加えていきたい。
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