昨年度に引き続き、骨髄間葉系幹細胞(BMMSCs)に代わる幹細胞源として期待されている乳歯および永久歯歯髄幹細胞を用いた細胞治療法の開発について、特に歯槽骨再生および同種移植に焦点をあて、さらなる研究を行った。生後2ヶ月の子イヌより抜去した乳歯および親イヌより抜去した永久歯から歯髄由来細胞を単離、培養した後、親イヌ顎骨に直径10mmの歯槽骨欠損モデルを作成し、得られた乳歯歯髄由来細胞、永久歯歯髄由来細胞およびBMMSCsを骨芽細胞分化誘導培地にて培養後、それぞれ移植した。生理活性物質および足場としては、多血小板血漿(PRP)を用いた。その結果、移植後4、8週において、コントロール群(欠損のみ、PRPのみ)では骨形成がほとんど得られなかったのに対し、乳歯歯髄由来細胞、永久歯歯髄由来細胞およびBMMSCs移植群においては良好な骨形成が確認された。再生骨について免疫組織学的評価を行ったところ、Osteocalcin陽性を示した。また、移植後8週における骨占有率は、細胞移植群がコントロール群に対して有意に高い値を示したが、細胞間での有意差は認められなかった。その後細胞移植8週後に細胞移植部へのインプラント埋入行い、16週後に屠殺し、組織学的、組織形態学的評価を行ったところ、インプラントと再生骨の骨結合率bone-implant contact (BIC)は、コントロール群と比較し細胞移植群では有意に高いことが示された。細胞移植により再生された骨と埋入されたインプラントとの骨結合率が良好であったことから、骨欠損部への歯髄由来細胞移植が咬合機能回復に有用である可能性が示唆された。さらに、乳歯歯髄由来細胞を用いた世代間を超えた移植により良好な骨再生が得られたことから、同種移植の可能性が示唆された。なお、この成果はCell Transplant (2010 Epub)において発表した。
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