研究概要 |
本課題としたアグリゲーション法を用いることで,担体を用いブタ歯胚細胞を移植した時より,早期に歯の硬組織である,エナメル質と象牙質が再生することが分かった。アグリゲーション法を用いるために回収した細胞群をペレットにすることで,歯胚細胞群の上皮一間葉相互作用が早期に誘導されて,組織形成が促進されることが示唆できる。一方で,われわれが考案した培養法にて培養増殖させたブタエナメル上皮様細胞をブタ歯髄細胞と混合させて移植するとさらにエナメル質が早期に形成することが分かった。上皮細胞を培養することで,アメロゲニンを発現する均一な細胞集団が得られていると考えられた。 本課題の達成にはブタ細胞を用いることとしていたが,臨床応用を見据えるとヒト細胞の解析が有効である。そこで,昨年,ヒト細胞の入手を可能し,今年度は,ヒト歯髄組織から間葉系幹細胞を得るために幹細胞マーカーを用いてFACSにて単離した。この研究から,乳歯歯髄には未分化性を維持するための因子と考えられるNGFR(CD271)を発現する細胞が存在することが分かった。このNGFRの発現は永久歯の歯髄細胞には認められなかった。一方で,すでに間葉系の幹細胞のマーカーとして知られている,CD10,CD44,CD73,CD90は両細胞において発現していた。そこで,NGFRの陽性細胞と陰性細胞を単離して比較すると,細胞増殖能はNGFR陽性細胞が高く,多分化能の解分では,NGFR陰性細胞の多分化能が高いことが分かった。これらの結果からNGFRは,間葉系幹細胞として考えられている歯髄幹細胞の増殖と分化に強く関与していることが考えられた。しかしながら,なぜに,永久歯歯髄細胞では,このNGFRが発現していないのかは明らかではない。
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