研究概要 |
本研究の目的は、ハイドロゲルシート上で骨芽細胞あるいは上皮細胞を分化培養し、そのシートを用いて口蓋瘻孔を閉鎖する新しい手法を開発することである。平成20年度ではシート上での細胞培養に着手した。 口腔粘膜細胞および顎骨骨膜細胞を採取する方法は確立されており、我々の今までの研究成果からも明らかである(Kuroda, et al. J Pharmacological Sciences. 108(1) : 18-31, 2008)。そこで、シート上における細胞培養および細胞分化を確立させるため、動物実験において採取が容易である骨髄細胞を用いた培養実験を行った。ラットの骨髄より得た骨髄細胞をハイドロゲルシート上に播種し骨芽細胞分化培地を用いて培養を行ったところ、生化学的および分子細胞学的解析から骨芽細胞への分化が有意に促進されたことが明らかとなった。また、予備実験として、ラット頭蓋骨に人為的に作製した骨欠損をハイドロゲルシート単体で覆ったところ、放置された欠損あるいはコラーゲンシート単体で覆った場合と比較して骨再生が促進されたことが、軟X線像およびμCT解析にて明らかとなった。現在、上皮細胞のシート上での培養に着手している。口蓋瘻孔においては上皮および骨の組織再生法の確立が、他の機能を犠牲にすることのない飛躍的な機能回復をもたらすと期待できる。本年度の実験は、シート上の培養によって細胞分化を確立することであった。このような細胞培養による手法は、口蓋瘻孔のような自己再生が困難な大きな欠損組織を再生する場合に有効な手段である。そして本年度の結果を参考に来年度以降の動物実験の詳細を決めていく。
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