研究概要 |
本研究の目的は、ハイドロゲルシート上で骨芽細胞あるいは上皮細胞を分化培養し、そのシートを用いて口蓋瘻孔を閉鎖する新しい手法を開発することである。平成20年度までにシート上に骨髄細胞が培養され、増殖することが確認された。そこで平成21年度では骨芽細胞分化、上皮細胞分化を試みた。 口腔粘膜細胞および顎骨骨膜細胞を採取する方法は確立されており、我々の今までの研究成果からも明らかである(Kuroda, et al.J Pharmacological Sciences.108 (1) : 18-31, 2008 ; Kuroda, et al.Journal of Biomaterials Applications.Jan.2010.)。そこで、シート上における細胞培養および細胞分化を確立させるため、動物実験において採取が容易である骨髄細胞を用いた培養実験を行った。ラットの骨髄より得た骨髄細胞をハイドロゲルシート上に播種し骨芽細胞分化培地を用いて培養を行ったところ、生化学的および分子細胞学的解析から骨芽細胞への分化が有意に促進されたことが明らかとなった。ラット頭蓋骨に人為的に作製した骨欠損をハイドロゲルシート単体で覆ったところ、放置された欠損あるいはコラーゲンシート単体で覆った場合と比較して骨再生が促進され、上皮の治癒が促進されたことが、軟X線像、μCT解析および組織切片によって明らかとなった。口蓋瘻孔においては上皮および骨の組織再生法の確立が、他の機能を犠牲にすることのない飛躍的な機能回復をもたらすと期待できる。平成21年度の実験は、シート上の培養によって細胞分化を確立することであった。このような細胞培養による手法は、口蓋瘻孔のような自己再生が困難な大きな欠損組織を再生する場合に有効な手段である。これらの結果を踏まえ、平成22年度の動物実験を進める。
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