骨延長法は、手術侵襲が低く確実に骨形成が期待できる骨増生法であるが、母床骨の骨切りは必須で、その母床骨が貧弱な場合には満足できる骨増生は得られない。本研究では、母床骨が貧弱であっても十分な骨の増生が期待できる骨膜伸展骨形成法を確立すると同時に、生理活性物質や生体材料を応用して最も効果的な骨膜伸展骨形成による骨増生を得るための条件や手法を発見・開発することを目的としている。本年度はウサギを使用した骨膜伸展骨形成実験系を応用してその十分な標本数を確保し、再現性を確認したうえで、生体材料を応用した実験を実施することを主目的とした。なお、本ウサギの実験で満足する結果が年度内に得られれば、さらに実験動物をイヌに替えて同様の実験を実施する予定であったが、イヌの実験を実施する段階までウサギの実験成果を挙げることはできなかったため、本研究はウサギの実験系による結果を得るにとどまった。本研究で最終的に得られたウサギの実験系による結果は、1、チタンメッシュを使用した下顎骨の骨膜伸展骨形成ではチタンメッシュを含む骨膜下に再現性よく有意な骨形成が得られたことが確認された。2、チタンメッシュをβTCPブロックに替えて同様の骨膜伸展骨形成実験を実施したところ、材料の破損が著しく、伸展したスペースに確実に骨形成が得られたか否かの評価が難しい標本が多く生じた。しかし、一部の標本では骨膜下でTCPブロックを取り込む様な骨形成が組織学的に観察された。3、ポリL乳酸メッシュプレートを使用した骨膜伸展実験ではチタンメッシュやTCPブロックで得られたような有意な骨形成は観察されなかった。本補助金の支援は本年度で終了するが、今後はTCPブロックと今回結果があまり良くなかったポリL乳酸メッシュプレートにBMPや成長因子等の生理活性物質を応用して同様の実験を行い、結果を比較する予定である。
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