研究課題
本研究は、浸潤転移能の高い癌細胞のRNAヘリカーゼを同定・クローニングして口腔癌治療における新たな分子標的療法を開拓する目的で行った。癌細胞に強く発現するペプチド抗原に対する抗体を作製した後、このペプチド抗原を発現するクローンを扁平上皮癌に由来するcDNAファージミドライブラリーを用いてスクリーニングした。分離したクローンからssDNAを精製してダイデオキシ法でcDNA塩基配列を決定した。塩基配列から推測されるアミノ酸配列を決定してホモロジー解析を行った。アラインメントの検索では,類似性の高い部分を局所的に検討するローカルアラインメントと、配列全体の類似性をみるグローバルアラインメントを行った。RNAヘリカーゼの細胞内局在の検討は口腔扁平上皮癌細胞の細胞内分布を免疫染色法で検討した。その結果、λphage-cDNAライブラリーから得られたクローンの遺伝子配列から推測される蛋白の分子量は85kDaでウイルスの外套蛋白の配列に類似した部分が存在した。このクローニングされた蛋白には9つのヘリカーゼモティーフが存在し、この部分はウイルスからヒトに至るまで54.3%の相同性を認めた。さらにローカルアラインメントではO-グリカナーゼ(α-N-acetylgalactosaminidase)と17.1%の相同性がみられた。免疫染色では、この蛋白は癌細胞の核内と細胞質の一部に存在した。特に核内への移動は細胞周期と関連していることが示唆された。これらは、1.正常細胞に比べ癌細胞に発現していること、2.細胞の増殖や蛋白合成に関わるヘリカーゼのモティーフを有すること、3.ウイルスエンベロープ蛋白にも存在していることなどから、本蛋白が癌遺伝子産物の形質を有すると考えられた。
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