本年度はまず、ヒト歯根膜細胞(HPDL)への歯周組織再生関連サイトカイン遺伝子の導入法を確立するために、HPDLをin vitroで硬組織形成細胞へと分化誘導した際に発現上昇が認められるPeriostinアイソフォームTYPEII(P-iII)に注目し、マウス歯根膜細胞株であるMPDL22へのP-iII遺伝子導入実験を行った。すなわち、ヒト歯根膜細胞より単離したP-iIIの発現ベクターを作製し、MPDL22に導入し、P-iII導入MPDL22におけるP-iII遺伝子のmRNAレベルでの発現をRT-PCR法で確認するとともに、P-iIIのタンパクレベルでの分泌をウエスタンブロット法にて検出した。 その結果、P-iII導入HPDL22において、P-iII遺伝子が強発現され、P-iIIのタンパクレベルでの発現が確認された。そして、P-iII遺伝子を導入したMPDL22は、遺伝子未導入MPDL22と比較して有意に高いアルカリフォスファターゼ活性および石灰化物形成能を示したことから、MPDL22に導入されたP-iII遺伝子が歯根膜細胞の硬組織形成分化を機能的に制御する可能性が示唆された。また、歯周組織再生の空間確保に有効であると考えられる骨補填材であるβ-TCPのブロックと脂肪組織由来幹細胞(ADSC)を共培養した結果、ADSCがブロック内部に定着して生存することが明らかになったことから、β-TCPが歯周組織オルガノイド(器官様構造体)の足場材として有用である可能性が示唆された。 次年度は、歯根膜細胞への歯周組織再生関連サイトカイン遺伝子導入法を検討し、β-TCPなどの足場材とともに三次元的に培養することにより、歯周組織オルガノイド構築の可能性を探索する予定である。
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