H21年度に引き続き、H22年度入職の新卒看護師を対象とした危険予知トレーニング(KYT)の受講の効果を、視点移動を中心とした確認行動、および、危険な状況の察知状況から検討するため、対象者をKYT受講後に2回目の測定を受ける「介入群」と、2回目の測定後にKYTを受講する「対照群」にわけ、KYT研修およびベッドサイドの模擬看護ケア実施時の行動測定を実施した。対象者の募集は、協力を得られた病院の看護部を通して実施した。測定は、平成22年11月から12月に、KYT研修は11月29日に1回、実施した。2回分の記録画像は、実験終了後に対象者に送付し、各自のケア行動を確認できるようにした。 18名が参加したが、3名は1回分の測定データしか得られなかったため、15名分の結果が得られた。21年度のデータと統合し、介入群22名、対照群10名の結果が得られた。不安全状況への気づきの件数について、介入群と対照群に分けてWilcoxonの符号付順位検定を用いて1回目・2回目の変化を検討したところ、どちらの群においても有意な違いは見られなかった。 1回のKYT研修受講での効果は限られていると考えられた。また、環境確認の大切さは意識しながらも、実際のケア場面の中で行動に組み込むことが難しい対象者もいると考えられた。今後は、注視点の分析を進め、KYT研修受講により、環境への注視量が変化したかについて検証を進めていく。入職後約半年という実施時期は、一通りのケアが身につき、ベッドサイドのアセスメントの幅が広がる時期として適切であったと考えるが、個人差も大きく、一人ひとりの発達過程に応じた目標設定が必要と考えられた。
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