前年度までに、新式テープ材が種々の実験的疼痛(電気刺激によるpricking pain、爪根部の圧痛、及び冷水痛)に即時的な痛みを軽減することを明らかにした(成果の1つは2009年9月の日本看護技術学会第8回学術集会大会賞を受賞)。また、このテープ材を捻挫や打撲、筋肉痛など運動器の痛みに試用した結果、大多数の対象にテープ材の貼用直後から鎮痛効果が認められ、剥がすと痛みが再燃した。 そこで最終年度は、(1)テープ材の臨床痛への鎮痛効果を痛覚定量装置(Pain Vision、ニプロ社)を用いて検討すること、(2)テープ材の皮膚接着面の性状と鎮痛作用との関係を検討すること、さらに(3)テープ材試用例を増やし、テープ材の臨床痛への適用方法を模索すること、さらに実用化への問題点の整理と適用基準の作成を目的とした。 その結果、以下のような暫定的結論を得た。 (1)新式テープ材が運動器の痛みを軽滅することを痛覚定量装置で確認することが出来た。 (2)テープ材の基本形は直径1.5mmのビーズを5mm間隔に敷き詰めたものであるが、圧迫圧と可動性により優れたガラス球の方が、若干鎮痛効果が大きい傾向があり、鎮痛効果がテープ材粘着部に貼り付けた素材の軽微な可変性皮膚接触圧によることが特定されつつある。 (3)テープ材試用は現在までに200余例、痛みの種類は11となり、少なくとも表在痛と深部痛への鎮痛効果はほぼ実証された。 これらの結果を踏まえ、さらに、今後も例数を増やしながら無効例を詳細に検討し、その原因追究と改良を行う。現在、この新式テープ材に注目する企業(医療用各種テープ製造販売元、現在までに2社)に実用化に向けた試作品製作を依頼中である。実用化にあたっては、本研究で得たエビデンスを元に作成したテープ材の適用ガイドラインを企業に提案し、痛みのケア用具としての汎用化を目指す。本研究の成果は本年度中に論文発表する予定である。
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