本研究の目的に沿って、本年度は以下について検討した。1)日本における参加型アクションリサーチの文献検討を行い、参加型アクションリサーチの方法を用いたと思われる研究論文3つを選び、その内容を検討した。その上で、保健師とその保健活動を変化させていくことを課題としてアクションリサーチを実施した2名の研究者に、研究論文を基にインタビュー調査を行った。インタビューでは、研究の枠組み、研究者の立場、対象となった保健師への研究の説明と同意の取り方、研究過程で生じた倫理的な問題について質問し、討論した。その結果、アクションリサーチは、研究というよりも実践を変えていく方法論であることが明らかになった。そのために、アクションリサーチは、まず実践活動を開始し、そのなかで保健師が課題に取り組みたいと動機づけられたり、周囲の理解が得られたときにアクションリサーチへと発展していく実践のプロセスの一部であることが明確になった。倫理的な問題としては、情報管理のあり方が取り上げられた。2)実際に研究者らが研究のプロセスを振り返ったり、追跡したりすることができる福島県立医科大学看護学部における参加型アクションリサーチの2つの実践例をとりあげ、研究計画、研究計画書の倫理審査、研究を進めていく中で直面した問題について研究者にインタビューを実施し、その内容の分析を行った。3)本年度の調査結果、倫理的な問題を含めアクションリサーチを行っていくためには研究の前提となっていることを明確にし、これまでの研究方法(量的研究、質的研究)とはどのように異なっているかを説明できるようにすることが課題となった。
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