本研究は、これまでに実施した日本とカナダにおける参加型アクションリサーチを事例として研究過程を分析し、生じてくる倫理的な問題とそれへの対応策を検討することによって、参加型アクションリサーチの研究倫理のガイドラインの試案を作成することを目的とした。平成20年度は、4名の参加型アクションリサーチによって研究を実施した研究者への聞き取り調査・インタビューを実施し、その研究過程を分析して倫理的な問題を抽出したが、それを基に平成21年度はガイドラインの試案を作成し、研究協力者間で妥当性の検討を行った。さらに、その試案を各施設の倫理委員会の倫理審査基準と照らし合わせて問題がないかどうかについて検討した。とくに参加型アクションリサーチにおいては、研究計画そのものを状況に応じて修正していくことが必要になり、研究計画のあり方への対応が求められることや、研究参加者である研究対象者に対して研究協力の同意をどの時点で取り、本人の意思によっていつでも研究への参加を取りやめることができることをどのように保証するかについて議論になった。本研究で作成したガイドラインの試案は、今後、実際に活用することによってその適切性や妥当性を検討する必要があるが、本研究を通して研究方法として曖昧さを残している参加型アクションリサーチの特徴をより明確にすることができた。本研究の成果は、カナダにおける参加型アクションリサーチの研究過程との比較検討をすることができなかったが、各施設の倫理委員会における研究計画書を審査する上での参考として使うことは十分できると考える。
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