研究概要 |
本研究は、人工呼吸器や大動脈バルンパンピング(以下IABPとする)などの生命維持装置を装着された患者への看護ケア実施による安楽の提供と、Comfort評価表を作成することを意図した。平成20年度は安楽ケアのための看護ケアの実施基準ならびに安楽を評価するための評価表作成作りのため、内外の文献検討を行った。平成21年度は、急性心筋梗塞を発症し救命のためにIABPが装着された患者への、看護師による全身清拭実施と、それによる身体負荷と患者側から見た清拭体験を明らかにするために、生理的指標としては、心拍変動の高周波成分、RR間隔を、清拭体験としては患者へのインタビューを試みた。男性15名、女性5名の計20名の患者に全身清拭を実施〔清拭時間(平均)30±7.69分、心機能としての酵素値(CK)の最大CK-MB観測値から清拭までの時間17±7.25時間〕したところ20名中15名は、快の感覚を示す生理的指標が上昇した。患者の清拭体験の語りからは、清拭前には「辛抱していた」現実感がなかった」など7カテゴリ、清拭中は「されるがままだった」「暖かかった」など4カテゴリ、清拭後は「さっぱりした」「心地よかった」など8カテゴリが得られた。平成22年度は、Comfort研究の第一人者であるDr.コルカバのcomfort理論を基にしたcomfortのタイプ、comfortとなる状況より抽出したsense,relief,ease,transcendenceの4つの要素から作成したcomfortのマトリックスを応用し、12項目からなる「重症患者のComfort評価表」を作成した。 本研究より、重症患者へ看護師が行う日常生活行動援助(清拭等)は、患者に快の感覚をもたらすことが明らかとなり、患者の回復に積極的に取り入れていく必要があることが示唆された。今後は開発したComfort評価表を用いて、客観的データを蓄積していくことが重要と言える。
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