研究概要 |
縮小期,成熟期,完結期(法橋の分類)の家族を対象とし,長期入院治療が必要な家族員がいる家族(11家族)と入院している家族員がいない家族(22家族)に対して,家族環境アセスメントモデル(FEAM)にもとづいた半構成面接調査と質問紙調査を実施し,ミックス法による家族機能の比較・評価を実施した.分析の結果,家族員の健康障害や入院によって、家族内部環境システムが強く影響を受けおり,普段の家族の状況が制限されることの家族にとっての意味,家族の考える優先順位,新しく得た知識や技術を家族の生活に反映させる意欲,家族の能力,今までの生活と新しい生活の融合,家族内の合意形成,入院中の家族のニーズを満たすことのできる場所と時間の確保などに対する支援の必要性が示唆された. さらに,中学生の子どもをもつ家族を対象として,家族機能尺度のSFE日本語版(法橋らが開発)を使用し,質問紙調査を実施した(有効回答は779家族).分析の結果,「家族がレジャーに出かけること」「家計をやりくりすること」「家族員と宗教のかかわり」「家族が充実した保健・医療・福祉サービスを受けること」「家事を家族員が協力して行うこと」の順に家族機能の満足度が低いことが明らかになった.したがって,家族員のかかわりを示す項目において,家族機能の満足度が低いと判断できる.子どもの成長・発達の観点から中学生の子どもが家族という存在から自立しようとするために,家族とともに過ごす時間よりも学校行事や部活動,友人などと過ごす時間を優先しているという特徴に起因するのではないかと考えられる.さらに,SFEのカットオフポイントを基準として家族機能不全群(世帯n=179)と家族機能非不全群(世帯n=589)に分け,属性の比較検討を行った結果,家族機能不全群ではひとり親世帯が有意に多く,世帯収入が有意に低かった.
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