研究概要 |
セーフティプロモーション(以下「SP」と略)とは,地域に暮らすあらゆる年代の人々や,その人々を取り巻く環境を介入の対象とし,事故や傷害の防止,犯罪の防止,自殺の防止等を含む幅広い範囲を取り上げ,課題解決に有効であると示されたプログラムを生活の場において組織的に実践することを目的とする住民活動である。 研究者らは,SP活動の推進,セーフコミュニティ(以下「SC」と略)認証に向けた取り組み,外傷予防の発生を的確に把掘するためのサーベイランスの確立などをうためには継続的な住民参加が必要であり,そのための重要な鍵は地域住民の合意形成と主体的参加であると考えている。 20年度の研究では地域住民活動に見られる住民間の目的意職形成の成因について,A市の取り組みをもとに外傷予防における地域住民の主体的参加意識を醸成するためにはどのような働きかけが有効であるかを探った。 研究方法は,半構造化面接法を用いた面接調査,および,研究者が研究対象になる集団・地域社会の中に人り込み,時間と場を対象者と共有し,内部から観察し研究テーマを明らかにする「参与観察」の手法を用いた。 結果,30歳代2名,40歳代2名,50歳代2名,60歳代5名,性別は男性1名,女性10名,の合計11名より協力を得た。インタビューに要した時間は1人平均40分であった。 SP/SC活動に取り組んだ対象者が,活動開始初期に感じた手ごたえ及びやりがいは,(1)「新しい知織の取得」,(2)「意思表明の重要性」,(3)「連携・人とのつながりの重要性」,(4)「まちづくりに関する視点の変化」,(5)「自分から行動してより良い環境を作る」の5項目に分類できた。 SP/SCの活動に関わり始めた対象者が,活動初期はおいて自らの活動や役割についての自己認識は9項目に分類できた。 他方,この取り組みは始まったばかりで,A市の外傷に関する統計結果とが当事者である市民に十分周知されていないため,問題意識が形成されないのではないかと推察された。よって,行動変容には本人の主体的参加とそのための意識化が欠かせないことが示された。
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