研究概要 |
平成20年度は実験系の構築を行った。入眠状況は麻酔深度測定装置BISを応用することとしているが,脳波による判定,加速度センサーによる測定を併用することで,より精度の高い結果が得られるものと考えた。また,自律神経系への効果を確認する目的で心電図RR間隔の記録を考慮しているが,リアルタイムで信号を確認するためにテレメーターからの信号(FM)をモニタすることとした。 入眠を促進させる要因として,心地よい音(音楽,落語など)を聴取すること,(特に冬期間)身体を温めること,飲酒による効果を検討した。音の聴取に関しては,経験的に入眠効果を観じている古典落語(志ん生;火焔太鼓),モーツァルト(K466)を用いた。音源の構成スペクトルの影響が考えられるため,FFTによるスペクトル解析を行ったところ,概ね,1/fゆらぎであることが確認された。 入眠に関して,健康成人を対象に,上記音源を聴取しながら脳波測定を行った。被験者はすべて,測定開始後8分以内に入眠兆候を示した。コントロール音源(ロックでない音楽)の場合との差は認められなかった。純正律音楽CDの聴取でも著明な効果は認められていない。 成人男性に対象に,冬季,身体の保温との関係をBISで評価した。入眠に要する時間に差はないが,末梢保温状態で比較的良女子な睡眠が得られている。就寝前1時間以内の温泉入浴(ナトリウム-塩化物泉)では入眠中も身体深部で高体温が持続され,入眠促進に対する効果は見られるものの,全体的に浅い睡眠となっていることが分かった。温泉入浴は真水入浴と明らかに異なる効果が得られた。また,温泉入浴にて得られる状態は,飲酒による効果と類似するものであった。これらの実験は健常で比較的若い世代を対象としている。高齢で不眠を自覚するグループで確認する必要がある。
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