研究概要 |
認知症高齢者の意思決定の尊重と人権擁護は,認知症の長期ケアにおける重要な課題である。そこで、本年度は医療・介護現場における認知症高齢者の意思決定の状況や課題を明らかにする目的で国内外の文献レビューを行った。国内の文献の検索には、医学中央雑誌のWeb版Ver.4を用い、1998年から2008年までの約10年間を検索期間とした。キーワードを「認知症」「人権」「意思決定」「精神的能力」「意思決定支援技法」とし、該当した文献は178編であった。178編について,論文内容を精読し,研究者間で合意を得た適格基準に基づき、該当する146編を精選した。それらの記述内容について比較検討した上で、主要なテーマに沿って要約内容の記述と今後の課題を明確にした。その結果、『意思決定を促す医療への当事者の期待』:認知症高齢者や家族らは、「病名や病状」「予後」「検査、処置、ケア」に関するインフォームドコンセントを望んでいた。『意思決定を支援するケア』:認知症高齢者の意思決定支援の領域として食事や排泄等の日常生活場面、入院や入所を決定する場面,治療内容を選択する場面等において、意思決定支援としてケア提供者が注目している日常生活の幅が広がってきている傾向が示唆された。『制度の活用』:必要性に関わらず利用率は低く、普及に向けて多くの課題が残されていた。『意思決定能力の判定』:成年後見制度の権限は主に財産管理が中心であることに鑑みて、能力判定は精神医学的判断の生物学的要素のみが偏重されていた。しかし、本人の意思決定を尊重するという原則、ノーマライゼーション、残存機能の活用ということに照らして、本人の価値観なども組み込んだ様々な判断要素が考慮されるべきであると考えられ始めてきていることが明らかとなった。外国の文献の検索には、PubMedを用い、高齢者の意思決定を中心としたキーワードにて検索し該当した419文献について、入手可能な文献を集め研究者間で分担し内容を精読中である。引き続き、主要なテーマに沿って要約内容の記述と今後の課題を明確にしていく。
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