認知症高齢者のQOLを保証し尊厳あるケアを提供していくため、看護師には患者の権利の擁護者として良質な看護を提供することが期待される。そこで、認知症高齢者の科学的根拠に基づいた意思決定能力の解明と医療・介護現場における認知症高齢者の意思決定の実態を明らかにする目的で、昨年に引き続き文献研究を行った。外国文献の検索には、PubMedを用い、高齢者の意思決定を中心としたキーワードで検索し該当した419文献について、入手可能な107文献を集め、研究者間で分担し内容を精読し、主要なテーマに沿って内容を検討し記述した。その結果、認知症高齢者の理解力の低下を予見するための方策、意思決定能力の査定、意思決定に関じて専門家が重要を置く事柄などが明らかとなった。また、本年度においては、認知症高齢者が、入院中、入所中に意思決定しなければならない決定事項とその特徴、認知症高齢者の意思決定に関わるアセスメントの視点及び意思決定を支えるために、看護師が用いているアプローチを明確にすることを目的とし、便宜的に選出した一般病院、療養病院において看護実践を行っている老人看護専門看護師、認知症看護の認定看護師を中心とした看護師9名に面接調査を実施した。面接調査で得られたデータをgrounded theory approachの手法を用いて分析した。その結果、看護師は、装具等の選択をする等の選択場面の発生時に、認知症高齢者が意思決定できるかどうかに関し、「決めつけないスタート」をきり、様々な方法を用いて「関係作り」や「理解度の確認」をし、「意思決定できることの確信」を得る。選択時には、具体的かつ分かり易い説明、提示といった「選択への手助け」を行い、認知症高齢者のサインをみて「不快への察知」その結果、「装具の再検討」を行うなどといった意思決定を支える看護の一部が明らかにされた。今後もカテゴリーの飽和を目指し、データ収集及び分析を継続していく。今後、文献レビューから得られた認知症高齢者の意思に関する科学的根拠と看護師の経験知から得られた専門家の総意に基づくケアの指針を築き、意思決定を支援する具体的ツール、すなわち意思決定支援ガイドモデルを作成する。
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