本年度においては、認知症高齢者が、入院中に意思決定しなければならない決定事項とその特徴、認知症高齢者の意思決定に関わるアセスメントの視点、及び意思決定を支えるために看護師が用いているアプローチを明確にすることを目的とした。便宜的に選出した一般病院、療養病院において看護実践を行っている老人看護専門看護師、認知症看護の認定看護師を中心とした30代後半~50代前半の看護師9名に面接調査を実施した。分析は、グラウンデット・セオリー・アプローチの手法を用いた。具体的分析手順として、(1)逐語録のデータの一文または段落ごとに名前をつけ同じものを集め、プロパティとディメンジョンを検討しカテゴリー名を決める。(2)事例間の比較によってプロパティとディメンジョンを増やし、それらを再度検討し、バリエーションをおさえる。(3)カテゴリー間の関係を検討し、ストーリーラインを生成する。グラウンデット・セオリーの分析においては、データ収集と分析を平行して行い、初回面接の後に出来る限り分析を行い、その結果を次の面接に活かしながら進めていった。その結果、認知症高齢者が、入院中に意思決定しなければならない決定事項には、治療や日常事のケアに関するものがあった。また、看護師と認知症高齢者との関わりにおいて《意思を尊重するという看護師の信念》、《患者の理解》、《決めつけないスタート》に努めるといった【関係性の構築】、《意思決定できることへの確信》、《理解度に合わせた説明》、《患者への提案》、《患者の反応により変化する看護》といった【専門的かつ実践的知識を駆使した意思決定を支える看護】の実践的内容が明らかとなり、意思決定支援ガイドモデル構築の礎となる知見を得ることができた。
|