1.研究の目的認知症高齢者を在宅で介護する家族に対し、主介護者の介護負担感の軽減を目的とした心理教育プログラムを実施し、その効果を検討する。 2.対象と方法 認知症高齢者を在宅で介護する主介護者25名に、全4回の心理教育プログラムを実施した。プログラムの内容は、認知症とその症状、家族のコミュニケーションに関する教育的介入と参加家族のBPSDに対する対応の検討で構成した。プログラムを受講した14名を分析の対象とした。効果の測定指標は、(1)POMS(Profile of Mood States)短縮・日本語版(2)CES-D(Center for Epidemiologic Studies)抑うつ尺度(3)Zarit介護負担感尺度(4)家族機能評価尺度(FAD : Family Assessment Device)(5)ストレスコーピングインベントリー(SCI : Stress coping Inventory)を用いた。効果の測定は、介入前・後、4ヵ月後に行い、測定指標の得点差を比較した。さらにプログラムに対する満足度も測定した。 3.結果および考察 (1)研究対象者の負担感得点は、介入前と比較し、介入後および介入4ヵ月後には有意に低下した。(p<0.05)。 (2)研究対象者の対処型は、介入前と比較し、介入後には、Con(対決型)とEsc(逃避型)の得点が有意に低下した(p<0.05)。また、介入前と比較し、介入4ヵ月後には、Con(対決型)、Pla(計画型)、Pos(肯定評価型)の得点が有意に低下した(p<0.05)。 (3)研究対象者の気分-感情は、緊張-不安といった感情が介入前に比較し、介入後は低下する傾向がみられた(p<0.1)。 (4)研究対象者の抑うつ得点に有意差は認めなかった。 (5)家族機能は、介入前と比較し、介入4ヵ月後に下位尺度である「情緒的反応」と「全般的機能」が有意に改善した(p<0.05)。しかし「役割」は有意に低下した(p<0.05)。 (6)プログラムに対する満足度は、プログラム参加者のうち12名(85.7%)が「満足した」と回答した。 本研究で実施した心理教育プログラムは、認知症高齢者を在宅で介護する家族の問題の対処の傾向と家族機能に変化をもたらし、介護負担感を軽減する効果があることが示唆された。次年度は、プログラムのプロセス評価指標を検討し、評価をより厳密に行う予定である。
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