・初期発達における大脳皮質の領域固有性と一般性 生後3か月の乳児が視覚刺激と音刺激に注意を向けているとき、音刺激の有無が脳活動に与える影響を、多チャンネル近赤外分光法(光トポグラフイ)を用いて調べた。視聴覚刺激に対しては、脳の様々な領域が活動を示した。一方、音声のない視覚刺激に対して、聴覚野で活動の抑制が生じ、視覚野・側頭頭頂連合野・前頭連合野等では視聴覚刺激のときよりも活動が減少し、後頭葉外側部等では視聴覚刺激のときと同程度の活動があった。以上から、3ケ月児における大脳皮質の領域固有な性質が明らかになった。 ・認知行動発達における視線の動的変化 アイトラッカーによる乳児の視線計測を開始した。生後6〜12ケ月児で、視聴覚の統合と模倣に関連する課題時の視線をそれぞれ計測し、予備的な結果を得た。 ・行動のU字型発達に関わる大脳皮質の機能的発達 安静睡眠時において、新生児・3ケ月児・6ケ月児の自発的脳活動を光トポグラフイで計測したデータについて、チャンネル間の時間相関の解析をしたところ、発達にともなうネットワーク構造の著しい変化が見出された。特に、左右の皮質の相同部位のみの相関が高まること、側頭頭頂領域のような情報の「ハブ」にあたる領域を起点として皮質間結合が形成されること、3ケ月になると、活動の相関のクラスターとして皮質の機能領域の分化を兄いだせること等がわかった。現在、刺激時のネットワーク構造について検討中である。 ・環境との相互作用を通じた学習と行動 新生児から生後4か月の乳児の自発運動に関するデータを追加し、四肢の運動パターンの複雑さに関する非線形動力学解析により統計的に有意な月齢変化を得た。また、モビール課題中の運動データで、学習前の自発的運動の頻度の個人差が学習の成績に影響を及ぼす事を見いだした。
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