研究課題
「経験」に基づく情報を神経回路内に長期的に「書き込む」ためには、一過性の電気的シグナルを何らかの化学的シグナル伝達機構によって増幅・固定・貯蔵し、長期間にわたる読み出しを可能とする分子機構が必要となる。そこで本研究課題では、樹状突起シグナリングを、(1)シグナル統合のコンパートメントとなる樹状突起の形成・成熟の分子機構、(2)シナプス活動により発生した局所シグナルが神経細胞体まで伝わり、転写・翻訳・細胞骨格動員などの機構の活性化により、細胞全体の応答性が変化する分子機構、(3)細胞全体の応答性の変化が、最初のシグナルを発生したシナプスの性質を選択的に、かつ長期的に修飾する分子機構、の3つの側面から徹底的に解明する。初年度においては、マウス個体の脳成熟過程における樹状突起形成にCaMKファミリーをメンバ-がどのように関与しているかを、in utero electroporation等により解析する実験系を構築した。また、シナプス活動に応答して転写活性化が引き起こされるときに、どのような樹状突起内シグナリングが必要か、さらに核内でどのような調節領域が関与しているかをArc遺伝子発現について詳細に解析した。さらに、Arcの樹状突起内動態を可視化するため、種々のウイルスベクターや、in utero感染・in utero電気穿孔法などを駆使、樹状突起内シグナル操作・計測の方法論の開発と最適化を行った。
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Proc. Natl, Acad. Sci. USA 106
ページ: 316-321