レンチウイルスベクターはHuman lmmunodeficiency Virus(HIV)由来のレトロウイルスベクターの1種であるが、特筆すべき利点として、非分裂期にある細胞にも効率良く感染できる特徴や、遺伝子発現が抑制されにくい特徴を併せ持つ。本研究では、動物個体レベルで遺伝子機能を解析するツールとして、レンチウイルスベクターの有用性について検討することを目的としている。20年度は、インテグレース活性を欠失させたレンチウイルスベクターを用いることでランダムな組込みを減らせば相同組換え効率を上昇するかどうかを検討した。その結果、ES細胞を用いたカルメジン遺伝子座を標的とした相同組換えに成功した。標的遺伝子組換え後もES細胞は全能性を有しており、キメラ動物を介して生殖系列に乗ることを確認した。 またジーントラップベクターを載せたレンチウイルスベクターを作製し、ES細胞に感染させることで効率良く遺伝子破壊できるかどうかを検討した。その結果、レンチウイルスベクターのLTRには偽スプライスアクセプターがあるために、一定頻度で偽陽性クローンが出現することが分かった。そこで点変異導入によりスプライスアクセプターを潰したコンストラクトを準備しなおし、ウイルスベクターの作製効率等に問題ないことを確認した。 ジーントラップしたクローンにおけるベクター挿入位置を効率良く決定する方法として、Ligation Mediated PCR法を採用し、その効率を検討した。増幅産物を1つ1つシーケンスするのではなく、次世代シーケンサを用いてマス解析することで、一度に複数クローンの遺伝子挿入位置を決定することに成功した。
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