研究概要 |
【目的】本研究では、レンチウイルスベクターの特徴を生かしてin vivoランダム遺伝子破壊法や遺伝子置換システムを開発し、遺伝子組換えマウスライブラリーを作製する。これらの遺伝子組換え動物はバイオリソースとして公開し広く生命科学研究者に提供する。さらに不妊マウスについて重点的に解析を進め、社会問題にもなっている不妊・不育のメカニズムを明らかにする。 【遺伝子破壊マウスの作製】引き続き遺伝子破壊マウスライブラリーの構築に取り組んだ。具体的には遺伝子破壊したES細胞を用いてキメラマウスの作製と生殖系列への寄与を確認した。またハプロイドのマウスES細胞株を樹立し、ウイルスベクター感染による遺伝子破壊に取り組んだが、ハプロイドES細胞株が不安定なために系として確立するには至らなかった。一方で、精子が緑色蛍光標識されるトランスジェニックB6マウスからES細胞を樹立して遺伝子破壊マウスの作製に応用し、個体復元の際に問題となる雄性不妊キメラマウスの精巣内に少しでも蛍光精子がいれば遺伝子破壊したES細胞由来と特定できること、さらに顕微授精により個体復元できることから、時間やコストの点で有効であることを報告した。 【生殖不全マウスの解析】本年度は小胞体シャペロンであるCalmegin, Calsperin欠損マウスの精子で欠失するPMISタンパク質について解析を進め、PMIS2欠損マウスの精子は見かけ正常な形態と運動性を有するが、子宮から卵管に移行できないために雄性不妊でることを明らかにした。さらにPMIS2は精子膜タンパク質ADM3の品質管理に必須であることを報告した。今回の成果は、精子受精能力を司るADAM3の品質管理機構、さらに受精のメカニズム解明に向けて重要な知見となった。
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