研究概要 |
我々は、これまでの研究結果(Nozaki et al., Nature Neurosci 2006)に基づき、腕の運動学習用の脳内過程(メモリ)が、もう一方の腕運動パターンに応じて切り替わることで柔軟な両腕協調運動が達成される、という仮説を提案した。この仮説の検証、メモリの脳内表象、メモリ更新規則の解明を目的として、本年度は以下の研究を実施した。 1.両腕リーチング運動中に左腕のみに新奇な力場を課すという運動学習実験を実施した。学習後に左腕が発揮できる運動学習効果は、右腕運動方向が学習時の方向から離れるに従って徐々に減少した。 2.右腕の動きに応じて左腕に力場が加わるように設定した新奇な力場環境に左腕は容易に適応できた。以上の結果から、腕運動学習用のメモリは反対側の運動パターンに応じて徐々に切り替わること、また、この切り替わり機構を備えているために、腕運動の制御過程はもう一方の腕運動を考慮に入れた運動指令を生成でき、結果として柔軟な両腕協誘運動が可能になっていることが示唆された。 3.メモリの切り替わりの脳内表象を調べることを念頭に、fMRI内で使用可能な手首運動用のマニピュランダムを開発・製作したH21年度以降、この装置を用いて、片手・両手手首運動における運動学習中の脳機能イメージング実験を実施する予定である。
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