石英繊維フィルタ上に捕集した大気エアロゾルを抽出・再粒子化し、高分解能飛行時間型質量分析計(HR-ToF-AMS)および吸湿特性測定用タンデムDMA(HTDMA)に導入して組成・吸湿性を調べる実験を進めた。フィルタ試料からエアロゾル成分を抽出する際には、極性の異なる溶媒として水、メタノールおよび酢酸エチルを用いた。そして、再粒子化された抽出物をHR-ToF-AMSに導入し、エアロゾル質量スペクトルを得た。この質量スペクトルの分布から、粒子態有機物に含まれる不飽和結合の多寡等について解析し、また、高分解能スペクトルの測定値を用いて、粒子中の有機物を構成する元素の割合(O/C、H/C比)を見積もった。さらに、HTDMAを用いて、抽出物から発生させた粒子の吸湿成長因子の相対湿度依存性を測定し、その結果から、抽出物に含まれる有機物の吸湿性を推定した。これらの解析により、都市エアロゾルに含まれる有機物の特徴付けに結び付く知見を得た。なお、これらの結果は、大気エアロゾルのオンライン測定で得られる結果との比較にも役立つと期待される。 また、9月に名古屋大学東山キャンパス内において、HTDMA、HR-ToF-AMS、雲凝結核(CCN)カウンタ等を用いた都市大気観測を実施した。本観測では、HTDMAの一段目のDMAによってエアロゾルを分級した後、HTDMAでエアロゾルの加湿後の粒径を測定するとともに、CCNカウンタおよび凝縮粒子カウンタを用いて分級後のエアロゾルに含まれるCCNの割合を測定した。得られたデータに基づき、エアロゾルの吸湿成長因子やCCN活性化粒径の計算を進めた。
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