平成22年の夏季に名古屋大学東山キャンパス内において、吸湿特性測定用タンデムDMA (HTDMA)に雲凝結核カウンタ(CCNC)を接続し、都市大気エアロゾルの観測を行った。このとき、CCNCは、HTDMAに含まれる2台の電気移動度分析器(DMA)のうち、2段目に接続されているDMAの下流側に接続した。そして、この装置構成により、異なる吸湿成長因子を持つ粒子群に対して、雲凝結核(CCN)/凝結核(CN)の比の粒径依存性(CCN効率スペクトル)を得た。また、都市エアロゾル粒子の粒径・吸湿成長因子のデータを利用した雲粒生成の見積りについて検討を行った。さらに名古屋では、上記の観測とは別に、高分解能飛行時間型質量分析計(HR-ToF-AMS)を用いて、単一エアロゾル粒子の質量スペクトルを取得する試みも行った。また、生物起源有機エアロゾルの寄与が比較的に高いと考えられる夏季に、和歌山県内の森林域において大気エアロゾルの観測を実施した。この観測では、HTDMAを用いてエアロゾル粒子の吸湿成長因子の分布を測定し、さらにHTDMAの1段目のDMAの下流側でエアロゾルを分割してCCNCおよび凝縮粒子カウンタ(CPC)に導入することで、CCN、CNを計測してCCN効率スペクトルを得た。また、HTDMAと並列にHR-ToF-AMSを動作させ、有機物など、森林域の大気エアロゾルの化学成分に関する情報を取得した。ただし、HR-ToF-AMSで得られたエアロゾル成分の濃度の定量値は、一般的な捕集効率を仮定する計算では過小見積りとなる可能性があり、解析において注意を要すると考えられる。
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