研究課題/領域番号 |
20671001
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
持田 陸宏 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (10333642)
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キーワード | 大気化学 / エアロゾル / 外部混合 / 質量分析 / 気候変動 |
研究概要 |
平成23年の8月に、他の研究グループによる大気観測研究と連携し、名古屋大学の東山キャンパスにおいて、都市大気を対象としたエアロゾルの観測研究を実施した。この観測では、吸湿タンデム微分型電気移動度分析器(HTDMA)の2段目の微分型電気移動度分析器(DMA)の下流側に雲凝結核カウンタ(CCNC)を接続したシステムを用いて、吸湿性の低い粒子に含まれる雲凝結核の計測を行い、また、時間帯によりエアロゾル粒子の吸湿成長の分布の測定も行った。この測定により、都市において一次放出されると考えられる低吸湿性粒子の特徴付けに有用なデータを取得することが出来た。また、同観測では、高分解能飛行時間型エアロゾル質量分析計(HR-ToF-AMS)を用い、大気エアロゾルの質量スペクトルを取得した。さらに、平成23年11月には、同じく名古屋において、HTD融を用いて吸湿成長の程度別に選別した大気エアロゾル粒子を、光散乱モジュールを動作させたHR-ToF-AMSに導入し、粒子の質量スペクトルを取得した。また、海洋大気におけるエアロゾルの混合状態への関与が考えられる一次海洋エアロゾル(PMA)を対象とした研究として、舞鶴市周辺の海域において、海水をバブリングする装置を用いて人工的にエアロゾルを発生させ、DMAおよびCCNCを用いて、そこに含まれる雲凝結核を粒径別に測定する実験を行い、PMAの雲凝結核活性の評価に利用できるデータを得た。また、海水をこれまでに実施した大気エアロゾル観測に関係する解析も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高分解能飛行時間型質量分析計を用いた大気エアロゾル粒子の吸湿成長別の質量スペクトルの測定を実現できたが、その解析などが残されている。雲凝結核活性に関する解析は比較的に進んでおり、一方、氷晶核に関する研究は見直しとなった。いくつかの代表的なエアロゾルの特徴付けを目指しているが、現時点では、都市大気に関する解析を重点的に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
大気エアロゾル粒子の吸湿成長因子の分布から、外部混合状態にあることを判定できると期待される都市エアロゾルを対象とする大気観測を今後も実施することで、混合状態とエアロゾル特性を結びつける知見の更なる獲得を目指す。特に、吸湿成長別の化学組成情報の取得は、本研究課題において重要であることから、この点に関して研究の進展を目指す。氷晶核活性に関する研究は、測定手法の確立が十分になされていないと判断し、検討の優先順位を低くすることにした。これまでに得られた研究結果のうち、一部については誌上発表を実現できたものの、学術誌に公表を行っていない研究結果も多く残されている。これまでに取得したデータの解析を進め、更なる論文発表を目指す。
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