地球温暖化など、気候の変化をもたらす要因は複雑であり、正確な将来予測を行い、有効な対策を導き出すためには、気候に影響する各素過程に対する理解を更に深めることが望まれる。なかでも、大気エアロゾルが気候に及ぼす影響には大きな不確定性があり、その解明は重要な課題として残されている。これまでの大気エアロゾル研究では、質量濃度を基に平均化された情報を扱うことが多く、雲・降水過程などに深く関わる個々の粒子の違い、すなわちエアロゾルの混合状態に関する知見は限られていた。このため、今後の同分野の研究では、個々の粒子の特性を明らかにするとともに、混合状態の情報を集約して気候影響の研究に利用する手法を確立することが求められる。そこで本研究では、このような取り組みのひとつとして、エアロゾル粒子の特性の情報を、混合状態の情報と共に取得する大気観測を実施し、これらの解析を行う。 本課題では、個々の大気エアロゾル粒子を区別する尺度として、これまで一般的に用いられてきた「粒径」に加えて、吸湿性測定用タンデムDMA(HTDMA、ここでDMAは電気移動度分析器を表す)で得られる「吸湿成長因子(乾燥状態に対する加湿状態の粒径の比)」を用いる。大気観測では、エアロゾル粒子の吸湿成長因子の測定と、他の特性の測定(例:質量分析に基づく組成測定)を行い、粒子の特性をエアロゾルの混合状態(粒径および吸湿成長因子)と共に解析し、エアロゾルの放出・生成・変質過程等の点から考察する。そして、気候過程における大気エアロゾルの混合状態の重要性について考察し、エアロゾルの気候影響の更なる理解に資する知見の獲得を目指す。
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