平成21年度においては、「ユダヤ教のなかのマイノリティに関する総合的研究-理論的側面」(研究計画調書におけるIa)の研究を進めた。すでに平成20年度に行われた聖書関連(ヘブライ語聖書やアラム語訳聖書)の文献のデータベース化をほぼ完成させたほか、ラビ文献(ミシュナ、トセフタ、タルムード等)といったハラハー(律法)のテキストにおいて現れるマイノリティ用語(さらには人間の区分に関する用語一般)のデータベース化も進めた。それと同時に、「ユダヤ教の中のマイノリティに関する総合的研究-実践的側面」(研究計画調書におけるIb)の研究も開始した。具体的には、ユダヤ教におけるハラハー以外の文献(ミドラシュ等)に現れるマイノリティや人間観に関わる用語・テキストのデータベース化を開始した。 また、当該年度においては、数多くのユダヤ学研究者を海外から招へいし共同研究を行うことにより、データベースに関する意見交換を行ったり、データベース化の作業を実際に手伝ってもらうことができた。ユダヤ文学が専門のイスラエル・ヘブライ大学ヨセフ・ヤハロム教授やオランダ・フローニンゲン大学ヴァウト・ファン・べークム教授、聖書やクムランにおける身体障害者について研究しているカナダ・ジョージブラウン大学トマス・ヘントリッヒ教授である。 さらに、当該年度における本研究課題の顕著な進展として、専門業者との協力のもと、データベースのWeb上フォーマットの原型ができたことである。これまでは、個々の入力者がエクセルやアクセスといったソフトにデータをプールしていたが、このフォーマットの完成により、Webを通して複数の入力者がデータを同時に入力することが可能になった。このフォームにおいては、日本語、ヘブライ語、英語のテキストを同時に入力や表示をすることができ、テキスト検索も可能になっている。
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