研究概要 |
本年度は志村多様体の数論幾何学およびそれに関連した幾何学,ガロア表現,保型表現の研究を行った.正標数アーベル多様体のモジュライの研究を行い,超特異アーベル曲面のモジュライ空間の既約成分が射影直線になることと,射影直線の1次コホモロジーが消えること用いて,3次元ジーゲル多様体のエタールコホモロジーに関する結果を得た.これは,表現論・位相幾何学・ホッジ理論などの手法を用いて従来より知られていた結果に対して,新しい数論幾何的な解釈を与えるものである.今後,より一層の精密化・一般化が望まれる.ゼータ関数の局所因子(悪い因子)への応用や,GSp(4)の保型表現に伴うガロア表現への応用も期待される.また,楕円曲線に伴うガロア表現に関する研究や,保型表現の持ち上げ定理の研究を行い,いくつかの楕円曲線に対して佐藤-テイト予想に関する結果を得ることができた.また,これと平行して,さらに研究を進めるために,2008年11月には京都大学において国際研究集会「Workshop on Shimura Varieties, Automorphic Representations and Related Topics」を主催し(加藤和也氏(京都大学)と共同),2009年2月には愛媛大学において「愛媛整数論集会」を主催した(谷口隆氏(神戸大学),平野幹氏(愛媛大学)と共同).これらの研究集会には,志村多様体・ガロア表現・保型表現の分野において世界的に活発な研究を行っている若手研究者を招聘することができた.これにより,参加者間で本研究課題に関する問題意識を共有し,旧来の手法・技術にとらわれない新しい発想・視点が生まれる土壌を整備することができた.
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