研究概要 |
本年度は研究に非常に大きな進展があった.本年度得られた主な成果は以下の2点である.(1)大域的手法と局所的手法を組み合わせることで,4次シンプレクティック群GSp(4)および3変数ユニタリ群GU(3)のラポポート-ジンク空間に超尖点的表現が実現される様子について研究を行い,各次数のコホモロジーに現れる表現についての結果を得た.中間次数以外のコホモロジーにも超尖点的表現が現れることを示した.このような結果は専門家の間でも予想されておらず,また,この結果はラポポート-ジンク空間のコホモロジーと既約許容表現のパケット(Lパケット・Aパケット)の構造の関係を強く示唆するものであり,今後さらなる進展が期待される(三枝洋一氏との共同研究).2012年1月には,この結果を韓国で行われた国際研究集会で発表した.(2)Lubin-Tate空間の安定モデルに現れる多様体とLusztig多様体の関係を研究した(津嶋貴弘氏との共同研究).また,2011年7月には京都大学数学教室で国際研究集会「Workshop on the arithmetic geometry of Shimura varieties and Rapoport-Zink spaces」を,2011年8月には大学院生・若手研究者を対象とした「GL(n)の保型表現論夏の学校」を,2012年1月には「定山渓数論的表現論研究集会」を主催し,保型表現論に関する将来の研究の土壌を整備した.これらの研究集会には,志村多様体・ガロア表現・保型表現の分野において世界的に活発な研究を行っている国内外の若手研究者を多数招聘し,参加者間で本研究課題に関する問題意識を共有することができた.そして,若手研究者同士の学術的交流を推進し,関連する他分野の研究者とも積極的な情報交換・議論を行うことで,既成の分野の枠にとらわれない総合的研究を推進することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究により,4次シンプレクティック群GSp(4)および3変数ユニタリ群GU(3)のラポポート-ジンク空間のコホモロジーについて,各次数に現れる超尖点的表現に関する結果を得ることができた.このような結果はラポポート-ジンク空間や志村多様体の専門家の間でも予想されていなかった画期的なものであり,本質的な進展を与えるものである.来年度以降,更に研究を進める予定である.
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