昨年度までに遂行した高解像度数値シミュレーションの結果を用い、銀河形成モデルに頻繁に採用される「星形成の密度条件」を検証した。流体力学やガスの暴走収縮の時間スケールを適切に評価した場合には、星形成開始時刻が従来の仮定よりも遅れることを示し、ある時点での一定領域内の星形成率をより正確に見積もるモデルを提案した(Maio他2009)。次に、原始星が形成されてから周辺ガス降着により成長する過程を詳しく調べ、宇宙の第一世代星と第二世代星(第一世代星からの放射の影響をうけたもの)の成長率と最終質量の違いを理論的に明らかにした(Ohkubo他2009)。 さらに、星間ガスに微量の重金属が存在する場合の化学反応や放射冷却を、これまでと同じく第一原理的に取り入れ、3次元流体コードに組み込んだ。球対称を仮定したテスト計算を行い、ガス雲収縮中の激しい分裂がおこる条件を詳しく調べ、星間塵による影響が主であると結論づけた。今後、これまでに生成した宇宙論的シミュレーションの初期条件を用いて本格的な低金属量星形成のシミュレーションを行う。 2009年12月には数物連携宇宙研究機構において、高赤方偏移の電波観測と銀河サーベイに関する国際研究会を主催し、初期宇宙構造に関する理論、観測の現状および将来の計画を検討した。2010年3月には長崎大学、筑波大学と共催で初代天体に関する国内研究会を行い、本年度の研究成果を発表した。この他、海外の3つの研究会で初代天体に関する招待講演を行った。
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