ニュートリノ混合現象の究明とニュートリノ質量情報の精密測定を目標に、加速器ニュートリノビームを活用したニュートリノ実験SciBooNEとT2Kを行っている。平成21年度はSciBooNE実験では、中性カレントπ^0生成反応の研究を中心に行った。T2K実験は4月からビーム生成をスタートし、各種ビームモニターおよびニュートリノ測定器でニュートリノの初測定に成功した。 【1】 SciBooNEではこれまで収得した2×10^20陽子/標的のデータの物理解析を進めた。特に、T2K実験の電子ニュートリノ転換探索でバックグラウンドとなる中性カレントπ^0生成反応の研究を進めた。π^0生成反応の機構を共鳴生成機構とコヒーレント生成機構に分け、それぞれの反応断面積を世界最高精度で測定し、論文として発表した。更に、世界初の低エネルギー反ニュートリノ反応断面積の測定、短基線ニュートリノ振動探索等の物理解析を進め、その途中結果を国際会議等で報告した。 【2】 T2Kは平成21年4月から実験を開始し、最初はミューオンモニターを使ってニュートリノビームの特性を測定した。そして同年11月にニュートリノビームモニターでニュートリノ事象の初観測に成功し、ビーム生成量とビーム方向を測定し、予想通りのニュートリノビームが生成されていることを確認した。12月には前置ニュートリノ測定器でニュートリノ反応事象を観測し、物理ランを平成22年1月よりスタートした。同年2月にはスーパーカミオカンデでの初ニュートリノ事象を観測し、実験が軌道に乗ったことを示した。現在はビーム強度を増強しながら、実験を継続している。 京都大学に設置した計算機をフルに活用して、SciBooNE実験の物理解析とT2K実験のデータ解析およびシミュレーションを行っている。
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