ニュートリノ混合現象の究明とニュートリノ質量情報の精密測定のため、加速器ニュートリノビームを活用し、SciBooNE実験で世界最高精度でニュートリノと原子核の反応断面積を測定した。それと並行して、世界最高感度でのニュートリノ振動測定を行うためT2K実験の準備、データ収集、最初の物理解析を行った。 【1】 SciBooNE実験では、全データを使って1GeV付近のCC反応の全断面積を世界最高精度で測定した。更に、CC反応の全断面積結果を使って、フェルミ研のブースターニュートリノビームのフラックスを決定し、同ニュートリノビームライン上のMiniBooNE測定器を使ってミューオンニュートリノ消失モードの高感度探索を行った。ミューオンニュートリノ消失の事象は観測されず、もっとも厳しい上限値を設定した。 【2】 T2K実験は、2011年3月11日(東日本大震災の日)まで1.46×10^20陽子/標的のデータを収得することに成功した。平成22年1月から6月までに取った3.23×10^19陽子/標的のデータを使ってニュートリノ振動解析を行った。振動解析は、(1)ニュートリノビームスピルの選択、(2)ビームシミュレーションを使って、前置測定器とスーパーカミオカンデ間でのフラックス比とその系統誤差の計算、(3)前置ニュートリノ測定器でニュートリノ事象を測定しスーパーカミオカンデ事象数を見積もる、(4)予想される事象数と観測された事象数を比較し、ニュートリノ振動を測定した。観測された電子ニュートリノ事象数は1で、ニュートリノ振動が無い場合の予想値が0.3事象、ニュートリノ振動がsin^20^13=0.1で起こる場合は1.2事象で大変興味深い結果となっている。また荷電π中間子反応確率の測定を、UBCのScott Oser、Hiro Tanakaと共同でTRIUMF研究所のテストビームラインで行った。
|