PZT圧電体薄膜からなる駆動機能、検出機能を内蔵した振動子のアレイを利用し、確率共鳴によるセンシングが可能な振動子を作製、評価した。共振周波数が異なる各振動子のアレイを同期させ、周波数チューニングしなくても複数の振動子において同期による確率振幅が起きる。その信号を平均化することで、デジタルからアナログ的な信号への変換ができることを示した。一方、高感度な熱量センサへの展開を行った。室温における熱でも、確率共鳴がおき信号を増大させ、それが複数の振動子で平均化されることで、熱ノイズがあっても高感度な測定を可能にした。2つの振動子を機械的に結合させ、振動振幅を変えることで、それぞれの振動子の非線形性が複雑に変化することを見いだした。また、この結合振動子が、ロジック回路を形成していることがわかった。このことは、結合した振動子を用いて、演算が可能であることを示しており、極めて高温などのロバスト環境で演算素子として利用できるかもしれない。 一方、高感度な熱量センサを単一細胞の熱を測定することに利用し、細胞レベルの生命活動のモニタリングに応用した。液体中の細胞の熱を熱ガイドを通して、真空中にある高感度の熱量センサに伝達する。周りが真空になっており、熱的に断熱されているため、高感度に測定できた。また、細胞が発生する熱が、確率共鳴的なふるまいをすることを見出した。
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