研究概要 |
本研究では,耐熱性,耐久性,加工性に優れ,希少元素であるPtフリーの新しいガラス成形金型材料の探索と,その精密微細加工を目的としている.本年度は,以下の成果を得た. (1)ガラス成形金型に適したPtフリーの新しいアモルファス合金の探索 (1)薄膜ライブラリによる有力合金系の絞り込み Ptフリーでもガラス成形に耐えられる耐熱性,機械的強度,耐ガラス融着性,耐高温酸化性を有する可能性のある合金系として,昨年度の予備検討の結果を踏まえて,Ni-Nb-Zr系,Ni-Nb-Zr-Ti系を探索し,アモルファスとなる組成領域を特定した. (2)候補合金系サンプルの評価 上記のように特定したアモルファス組成から,複数の組成を選択し,既存のスパッタ装置を用いて,薄膜サンプルを再成膜して耐熱性,機械的強度を評価した.その内,耐熱性,機械的強度に優れたサンプルについて,さらに耐酸化性,耐ガラス融着性を検討した.最終候補としたNi_<35>Nb_<40>Zr_<25>(at.%)組成を,導入した基板回転式NFTS成膜装置を用いて,厚膜サンプルを成膜し,切削性評価を行った.その結果,切削性に課題は残るものの,回折格子を有する金型の製作に成功した. (2)コンビナトリアル結晶化開始温度(Tx)測定法の開発 ・温度-時間変態線図のコンビナトリアル測定方法の実現 候補材料を放射率の安定なAl_2O_3基板上にスパッタ成膜し,それを温度傾斜が生じるように熱源を偏在させた真空加熱炉内で,加熱保持した.このサンプルを赤外線サーモグラフィで長時間測定することで,温度-時間変態線図の迅速測定を試みた.当初,既存の装置を改良して測定を試みたが,加熱に使用する赤外線の周囲からの放射(まわり込み)が測定ノイズとなり,Tx以下の温度での結晶化を検出することが困難であった.そこで,加熱用赤外線のまわり込みを排除し,冷却機能を強化してより一様な温度傾斜を実現可能な新しい実験装置を作成し,温度-時間変態線図の迅速測定に目途をつけることができた.
|